「この情報は誰が言っているのか?」その一言で、あなたが時間をかけて作った報告書の信頼性は崩壊します。ビジネス文書やアカデミックな世界において、情報源の示し方はあなたのプロ意識そのものを示すからです。「によるとも」という表現の曖昧さに終止符を打ち、読み手が一切疑念を抱かない、揺るぎない文章表現の技術を解説します。数々の難解な案件で培った、プロのライターが実践する情報ソースの明記術をお伝えします。
「よるとも」が生まれる背景:曖昧な日本語が信用を失う瞬間
多くのビジネスパーソンやライターが、報告書で根拠を示す際に一瞬立ち止まる場所。それが「〜によると」と「〜とも」の境界線です。この小さな言葉の選び方一つで、資料全体の説得力は天と地ほど変わってしまいます。
「によると」と「とも」の構造的誤解
まず、両者の本質的な役割を明確にしましょう。
- 「〜によると」: 情報源(ソース)を特定し、その情報が客観的事実または公式な発表であることを示唆します。これは情報の「重さ」を担保する機能です。
- 「〜とも」: 「〜とも言われている」「〜とも考えられる」のように、付帯的な補足、推測、あるいは未確定の伝聞情報を示すことが多い。これは情報の「軽さ」や、多様な見解の存在を示します。
この二つを安易に「A社の調査結果によると、景気は回復傾向にあるとも言われている」のように接続すると、読み手は「結局、この回復傾向は確かな情報なのか、それとも誰かの推測に過ぎないのか?」と混乱します。主張の軸がブレるのです。
なぜ「伝聞」と「補足」を混ぜると文章がブレるのか
私たちは、会議や報告の場で曖昧な表現を使うことで、無意識に「責任回避」を図ろうとします。しかし、読み手はあなたの文章に「この主張は信用できるのか?」という疑念を抱きながら読み進めています。
伝聞(とも)と確実な情報(によると)が混ざった文章は、まるで中身がスカスカのスポンジのようです。一見、情報が詰まっているように見えても、少し力を加えるだけで、ふわっと形が崩れてしまう。これが、あなたの論拠が「弱い」と評価される最大の原因です。
【実体験】上司の「朱入れ」から学んだ情報源の曖昧さの怖さ
数年前、私が作成したマーケットリサーチ報告書でのことです。「競合X社の売上は、業界筋の分析によると、昨対比15%増とも推測されている」と書きました。上司は赤ペンで、その「とも」の部分を二重線で消し、大きく「ソースの格付けは?」と朱入れしました。
その時の、背中に流れた冷や汗は今でも忘れません。会議室でその資料を開く参加者全員の「一瞬の沈黙」と、乾いた資料の音のプレッシャーが、いかに情報源の正確な提示が重要かを教えてくれました。信用は、この小さな曖昧さの積み重ねで、音を立てて崩れていくのです。
プロフェッショナルな引用に必要な「情報源の格付け」ルール
曖昧な表現をなくすためには、まず情報源自体を信頼度によって分類し、その「格付け」に見合った表現を使う必要があります。
情報源を「一次・二次・三次」で分類する判断基準
あなたの文章に引用する情報が、どの段階で生まれたものかを考えます。
| 分類 | 定義 | 信頼度 |
|---|---|---|
| 一次情報 | 発表元(企業、政府、研究者)が直接発表した、生のデータや調査結果。 | 最も高い |
| 二次情報 | 一次情報を基に、メディアや専門家が解釈・加工し、分析を加えたもの。 | 高い(分析者の信用度による) |
| 三次情報 | 二次情報をさらに編集者がまとめて概説したもの(例:教科書、百科事典)。 | 低い(一般的な参考情報として利用) |
プロの文書では、できる限り一次情報に立ち戻り、「〜によると」を使うべきです。二次情報以降を使う場合は、「A新聞の報道によると、B省の一次情報に基づき〜」のように、元の情報源がどこにあるかを付記する誠実さが求められます。
引用元を明確にする【鉄則3パターン】と具体的な例文
情報源の確実性を担保するための、プロが実践する表現の鉄則を3つご紹介します。
パターン1(確実な根拠):一次情報や公式発表を引用する
使用目的: 揺るぎない事実、数値、決定事項を提示するとき。
表現方法: 情報源を明確に冒頭に置き、「〜によれば、確証をもって〜」と断定的な語尾で締めくくります。
例文:
内閣府が先日発表した「令和5年度経済白書」によれば、確証をもって、地方における消費支出は前年比2%の増加を記録している。
パターン2(伝聞情報):複数の情報源や未確定情報を紹介する
使用目的: 市場の動向や推測を紹介しつつ、情報の不確定性を正直に伝えるとき。
表現方法: 「によると」で情報源を示した後、「ただし」「その一方で」を挟み、「〜とも言われている」と補足的に言及します。
例文:
主要メディアの報道によると、次期CEOの選出は年内と見られている。その一方で、一部の市場関係者の間では、選出が来春に延期される可能性も否定できないとも言われている。
パターン3(学術的引用):専門家の見解や理論を基盤とする
使用目的: 論文や専門的な企画書で、理論的背景や根拠を示すとき。
表現方法: 引用元を著者の名前や論文名で特定し、「〜に基づき」や「〜の理論体系によれば」と結びつけます。
例文:
行動経済学の権威である〇〇教授の最新論文『意思決定のバイアス』に基づき、消費者が価格変動に対して非合理的な反応を示すのは、初期投資の呪縛によるものである。
誤解を生まず、信頼性を高める接続詞の選び方
曖昧な「よるとも」を排除するには、「によると」と「とも」をきっぱりと使い分ける意思が必要です。
「によると」を使うべきは、数値や公式発表など客観性の高い情報
繰り返しになりますが、「によると」は「情報源の背負う信頼度」を文章に移植する機能があります。
使うべきケース:
- 政府や公的機関の統計、法令
- 企業の決算発表、プレスリリース
- 信頼性の高い学術誌に掲載された査読付き論文
- 検証済みの確実なデータ
「A社のIR情報によると、今期の純利益は予想を上回った」と書けば、読み手は「A社自身が発表したのだから間違いない」と納得します。
「〜とも(言われている)」を使うべきは、推測や付帯的な補足情報
「とも」は、メインの主張を補強したり、視野の広さを示すために使います。単なる噂話ではなく、「複数の専門家がそう考えている」といった、裏付けのある推測に限定して使いましょう。
OK例: 「景気後退の懸念は高まっている。ただし、この後退は一時的な調整局面であり、長期的な成長を阻害するものではないとの見解も有力だとも言われている。」
避けるべき表現と、代わりに使うべき表現リスト
あなたの文章の信頼性を一瞬で下げてしまう、曖昧な表現を排除しましょう。特に「AIが生成したような」無機質な表現は、読み手の心を冷やします。
| 避けるべき表現(NG) | 代わりに使うべき表現(OK) | 意図するニュアンス |
|---|---|---|
| 〜みたいだ、〜らしい | 〜が示唆されている / 〜と推定される | 専門的な推測 |
| おそらく、多分 | 統計的確度が高い / 蓋然性が高い | 論理的な予測 |
| 〜と言えるでしょう | 間違いなく〜である / 〜に帰結する | 結論の断定 |
| 関係者筋の話では | 匿名を条件とした情報提供者によると | 情報源の特定(限定的利用) |
読者を飽きさせない「情報源の示し方」の文体バリエーション
根拠を示す文章は堅苦しくなりがちですが、読者の集中力を持続させるためには、引用方法にもリズムとバリエーションが必要です。
冒頭で権威性を示す文型
情報源を文の最初に持ってくることで、読み手に「これは信頼できる情報だ」という心証を先に植え付け、主張の受け入れ態勢を整えさせます。
例:
世界的なフィナンシャル・タイムズ紙が分析するところによると、今回の市場ショックは、予想外のサプライチェーン断絶が引き金となっている。
文末でさりげなく補足する文型
メインメッセージを力強く提示した後、その結論を裏付ける情報源を文末でさりげなく補足することで、流れるような文脈を維持できます。
例:
我々は新サービスへの集中投資を行うべきだ。その結果、5年後には業界トップシェアを獲得する(弊社戦略部門の分析データとも言える結論だ)。
【五感描写の活用】冷めたマグカップを握りしめ、推敲を重ねた夜の孤独な戦い
信頼性の高い文章とは、徹頭徹尾、情報に責任を持つあなたの姿勢が透けて見えるものです。
夜中のオフィスで、冷めたマグカップを握りしめながら、引用元のPDFと自分の文章を何度も照らし合わせ、モニターの光で目がチカチカする。そうした地道な裏取りの作業こそが、情報に「体温」と「誠実さ」を宿らせます。
あなたが資料をめくって「このデータは間違いない」と確信したとき、その分厚い紙の重みは、あなたの主張の重みとなります。曖昧な表現を排除することは、孤独な戦いの中で情報に命を吹き込む行為なのです。
ケーススタディ:ビジネス文書におけるNG例とOK例
具体的なビジネスシーンで、「よるとも」の曖昧さを断ち切る方法を見ていきましょう。
企画書:競合他社の情報を引用する際の「グレーな表現」回避法
NG例:
競合A社は、内部の情報によると、新商品の開発に苦戦しているとも言われているため、今がチャンスです。
(根拠の信憑性が不明確。単なる噂話に見える。)
OK例:
競合A社の年次報告書(2023年版)によると、研究開発費が前年比で20%削減されており、新商品の開発サイクルに遅延が生じていると推察される。
メール:お客様からのクレームを上司に報告する際の「伝聞の正確性」
NG例:
お客様からは、担当者の対応が遅いという苦情をいただいたようです。対応マニュアルが複雑すぎるとも言われていました。
(伝聞と自己の解釈が混ざり、お客様の感情の正確な把握ができていない。)
OK例:
お客様からは「マニュアルのステップが多すぎて混乱した」という具体的なご指摘をいただきました。担当者への対応遅延は、お客様相談室のログによると約48時間の遅延を確認しております。
プレスリリース:自社の新情報を裏付ける外部情報のスマートな使い方
NG例:
当社製品の市場は急成長しているとも言われています。この機会に新製品を投入します。
(市場が急成長しているのは、自社の主張であり、客観性に欠ける。)
OK例:
外部調査機関X社のレポート(2024年4月発表)によると、当社の主要市場であるAIエッジデバイス市場は今後3年間で年率平均30%の成長が見込まれています。この確実な市場拡大を受け、当社は新製品を投入いたします。
信頼性の「体温」を文章に宿らせるための最終チェックリスト
最後に、あなたの文章から一切の疑念を取り除くための、情報源に関するチェックリストを確認してください。
チェックリスト1:引用元のURL、発行日、著者が明記されているか
情報がWeb上のものであれば、アクセス日とURLを、書籍であれば発行年と著者を記載することが、引用元の「鮮度」と「出所」を保証します。曖昧な「インターネット情報」では、信用はゼロです。
チェックリスト2:引用部分と自分の意見が明確に分離できているか
引用符(「」や"")を使い、どこまでが他者の情報で、どこからがあなたの分析や主張なのかを明確に分けましょう。これが混ざると、意図的な情報操作や盗用を疑われるリスクが生じます。
チェックリスト3:読み手が「この情報は確実だ」と腑に落ちるか
チェックリストは形式ではありません。最終的な判断基準は、「この報告書を手に取った部長や顧客が、会議の場で即座にその情報源の信憑性を認めるか」どうかです。一歩引いた批判的な編集者の視点で、自分の文章を見直してください。
ライティングで【信用残高】を稼ぐ:情報の裏取りと誠実さ
信頼は一日で崩れる。引用ルールを守ることは倫理である。
あなたの文章に引用された情報源が誤っていたり、捏造されていたりすれば、あなたのプロフェッショナルとしての信用残高は、瞬時にゼロになります。
引用ルールを守ることは、単なる文法的な義務ではありません。それは、読み手に対して「私はこの情報の正確性を保証する責任を持ちます」と誓う、ライティングにおける倫理です。
読者に提供する「安心感」こそがあなたのプロフェッショナルなブランドになる
読者があなたの文章を読んだとき、「この筆者の言うことなら間違いない」という安心感を得られた瞬間、あなたは彼らにとって信頼できるプロフェッショナルなブランドとなります。曖昧さを断ち切り、根拠に血を通わせる作業こそが、あなたの評価とキャリアを盤石なものにするのです。
FAQ(よくある質問):
1. 「〜の件について、確認によるとも」という表現は正しいですか?
回答: 間違いです。「確認によると」は情報源を指し、「とも」は伝聞や推測を指します。この二つを続けて使用すると、情報が客観的か主観的かが曖昧になり、プロの文書としては不適切です。確認結果を述べる際は、「確認した結果、〇〇という事実が判明した」のように、簡潔に結論を述べましょう。
2. 匿名情報源を引用する場合、どのように記載すればプロフェッショナルに見えますか?
回答: 匿名情報源の引用は極力避けるべきですが、やむを得ない場合は「社内の事情に詳しい関係者筋」「匿名を条件に取材に応じた上級幹部」など、情報源の「立場」や「資格」を明確に示してください。ただし、その情報が一次情報ではなく、伝聞である可能性を念頭に置いた表現に留めるべきです。
3. 信頼できるWebサイトからの引用と、書籍からの引用では、書き方に違いがありますか?
回答: 違いはありません。どちらも情報源を特定するという点では同じです。ただし、Webサイトからの引用の場合、発行日(更新日)だけでなく、「アクセス日」を明記することで、情報が変動する可能性に対応する誠実さを示すことができます。
4. 伝聞情報と確定情報を一つの文でつなぐのは避けるべきですか?
回答: 避けるべきです。特にビジネスやアカデミックな文書では、確定情報(事実)と伝聞情報(推測)は明確に分離し、異なる文や段落で取り扱うべきです。もし繋ぐ場合は、「しかし」「その一方で」などの接続詞を使い、それぞれの情報が持つ重みを読み手に正しく伝える配慮が必要です。
5. 文章のトーンによって「によると」の表現は変えるべきですか?
回答: 変えるべきです。例えば、フォーマルな報告書では「内閣府の発表によれば」が適切ですが、カジュアルなブログ記事や企画書の導入であれば、「(情報源)の調査で明らかになったのは、〜」のように、トーンに合わせて動詞を変えることで、読者に親しみやすさを感じさせることができます。基本は「誰が言っているか」を明確にすることです。
文章のプロフェッショナルとは、情報の正確さと誠実さに他なりません。「よるとも」の曖昧さを排除し、情報源を明確に示すことは、読者への最大の配慮です。本記事で紹介した鉄則3パターンを実践すれば、あなたの報告書は即座に信頼性を増すでしょう。小さな表現一つが、あなたのキャリアを左右します。今日からぜひ、引用表現に「体温」と「厳密さ」を込めてください。さらに詳しいビジネス文書の改善策や、信用残高を稼ぐライティングテクニックについては、こちらのプロフェッショナル向け講座をご覧ください。(CTA導線)

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